アップルそのもの

iPhone 4Sの発表に、賞賛よりもちょっと多くの失望が流れた翌日の10月5日。米アップル社の共同創業者であり前CEOのスティーブ・ジョブズ氏が亡くなりました。
アップル社と言えば、1976年に創業してからの初期は、パソコンメーカーとして独自の地位を築いてきた会社でした。Macintoshは、マウスでアイコンをポイントしながら操作する、現在のパソコンにつながる操作体系を一般に広めたパイオニアと言っても良いでしょう。私も、学生時代には、「Macでしか動かないソフトがある」ということで、PC-9801やWindowsだけでなくMacintoshとも格闘したものです。
ジョブズ氏は一度は内紛が元でアップル社を離れましたが、経営不振に陥った同社を救うため、1997年に復帰。その後はiMac、iPod、iPhone、iPadと、IT機器の世界を大きく変革するような新商品を立て続けに世界に送り出しました。彼がアップル社を離れていたときに興した会社のひとつが、「トイ・ストーリー」などの3次元CGのアニメーションですっかり有名になったピクサー社であることは、余談にしておくにはあまりにももったいない話です。
数々の新商品を送り出す上で、常に彼自身の意向が色濃く反映されてきたのだそうです。単にひとつの会社の経営者であるという以上の、「アップルそのもの」と呼んでも過言ではない存在でした。
2004年に膵臓がんが見つかって以来闘病中で、現役のときからずっとその体調がアップル社最大の不安要素と言われてきました。それにしても、8月にCEOを辞任してからたった2ヶ月での訃報には、私だけでなく驚いた方が多かったはずです。享年56歳。あまりにも若すぎます。


アップル製品のオーナーにはなったことがない私ですが、常々アップルの製品には憧れがありました。性能についてはよくわからないところもありますが、どれも実にカッコいいんですよね。製品というよりも「作品」と呼びたくなるような芸術的なセンスを感じました。
しかも、それは派手に飾り立てたものではなく、基本は実にシンプル。かといって、機能美に徹したとも言い切れない絶妙なバランス感覚があります。初代iMacの透け透けのデザインにも衝撃を受けましたが、結構印象に残っているのが、肉まんの上にフラットな画面が突き出ているような2代目のiMac。皆さん、覚えていますか?
もう一つアップル製品に持っている印象としては、スペック勝負をしたがらないことがあります。宣伝文句で数字が前面に出てきた覚えが、全くといって良いほどありません。この辺は日本のハードウェアメーカー各社とは完全に一線を画しているところで、とにかく一番大事にしているのは、その製品をどのように快適に使ってもらえるのか…ということのようです。


人の亡くなるタイミングなんて計れるものではありませんが、iPhone 4Sの発表された翌日というのは、何とも因縁じみたモノを感じざるを得ません。一部には、「4S」は「for Steve」の意味では?なんて話も出てくるほど。アップル社側は公式には認めないでしょうけど、ここまで会社を引っ張り続けてくれたことに対して、感謝の気持ちを持つのは当然のことです。
それにしても、そのiPhone 4Sに対する評価が今ひとつだったのは何とも切ない話です。外見ではほとんど変化がなかったものの、内部は大幅に進化し、使い方の部分では新しいものを見せてもらえるはずなんですけどね。同じ商品でも見せ方次第…というのは、これまでのアップルならよくわかっていたはずのこと。プレゼンテーションの名手でもあったジョブズ氏を失ってしまったアップルの辛いところだったのかも知れません。
しかし、そうも言っていられないのが現実。アップルは、これまで期待を寄せ続けてくれた人たちのためにも、ポスト・ジョブズ体制をしっかり構築していかなくてはなりません。企業として、ひとつの才能に頼り切っていてはいけないことはわかりきっていたのでしょうけど、代わりの誰かが出てくるのか、あるいは集団指導体制でカバーしきれるのか…いずれにしてもそう簡単に解決できる話ではありません。


伝説を築いた人物の死に対し、各方面から追悼のコメントが寄せられているのは当然のことでしょう。しかし、ひとつびっくりしたのは、Googleとサムスンが予定していた新製品の発表会を延期したこと。11日に予定されていたこの発表会では、Android OSの新バージョンと、これを搭載した新しいスマートフォンが発表されると言われていました。
確かにそんな気持ちにはなれない、というところかも知れませんが、アップル社とスマートフォンやタブレットがらみで激しく対立していた両社のコメントとしては、何だか少々白々しさも感じます。こんなときだからこそ、あえて不断の進歩を高らかに宣言するのも、ひとつのあり方のような気がするんですが…。
真意がどうなのかはわかりませんが、両社にとってはこんなときに発表しても盛り上がらないからもうちょっと後にしよう!というのが正直なところなのかも。何らかの深刻なトラブルが見つかったようでもありませんから、近いうちに改めて発表の場が設けられるはずです。私にとっては、新型iPhoneよりも大いに興味のある発表ですし、ちょっと待ちましょう。
後から発表された18日のNTTドコモの発表会の方は、当然ながら予定通りに行われることになっています。ここで、新バージョンのAndroidを採用する機種(あるかどうかは不明ですが)については、ちょっぴり歯切れの悪い発表を強いられることになりそうです。まあ、こちらもじっくり待ちましょう。



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