今回は、前回の「Weekend SSK on 富士山」の続きです。まだご覧になっていない方はこちらから先にお読みください。
富士宮口の新五合目を出発してから4時間。容赦なく吹き付ける風にも、登るにつれて険しくなる登山道にも、だんだん薄くなる空気にもめげず、山頂にたどり着いたのは午後2時10分でした。前回にも触れたとおり、意識してゆっくりと登ったのが良かったと思います。上りも下りも人が多く混み合っていたため、急ぎたくても急げなかった…と言った方が正確かも知れません。
富士宮口から山頂への目印になるのがこの鳥居です。このすぐ向こうに浅間大社奥宮があります。富士山の八合目から上はこの浅間大社の境内であるということになっているのだそうですが、その浅間大社の本宮は富士宮市にあります。前回、山頂付近には県境線が引かれていないことに触れましたが、富士山頂郵便局は富士宮局の分局、NTTは御殿場局といずれも静岡県。さらに元富士山測候所の住所も「富士宮市富士山頂剣が峰」…と、実質的には静岡県の管理になっていると言ってよさそうです。登山客は、首都圏からのアクセスが良い山梨県側からが多いそうなんですが。
その住所の通り、元富士山測候所の建っているすぐ側に、富士山の最高地点であり日本国内の最高地点でもある剣が峰(標高3,776m)があります。富士宮口からだと、こんなに近くに見える場所になります。せっかくなのでここまで足を伸ばしてみることにしました。しかし、剣が峰までの「馬の背」と呼ばれるルートは歩きにくい砂礫質の急な上り坂。ここまで必死に登ってきた私にとっては最後のもう一頑張りということになりました。
ほとんど這いつくばるように馬の背を上り、10分ほどで剣が峰にたどり着きました。宗谷岬のとき以来の、「日本の先っぽに立っているんだ」という達成感に満ちあふれていました。記念写真も撮ってもらいましたが、得意げな表情がありありと出ています。こうして「先端」に憧れるのはもはや人間の本能だと思いますね…違いますか?
ところで、先週も触れたとおり、ここまではずっと雲の中を進む形で視界は良くなかったんですが、日頃の行いが良かったのか剣が峰に登ったときにはすっかり雲は晴れていました。そして、眼下に広がるのは雲の海。まさに「あたまをくものうえにだし」です。相変わらず風は強烈でしたが。
午後3時10分に下山を始めました。他の登山道とは違い、富士宮口は全行程で登山道と下山道が同じコースです。だからこそ登山中にも降りてくる人たちに多く出会ったわけですが、帰り道にも登ってくる人たちとすれ違いながらゆっくり降りることになりました。しかも、その数は降りてくるにつれてだんだん多くなってきました。これは「山小屋で1泊」コースの皆さんですね。考えてみれば…いや、考えるまでもないのですが…私の今回の「日帰り登山」コースは初心者にとってはかなりハードです。
自分の身体を高いところへ引き上げてゆかなくてはならない登山と比べると、「落ちて」行けばいい下山は楽な面がありますが、その一方で足腰にかかる負担は下山の方が大きくなります。谷川岳ではまさにこれが理由で足を痛めてしまったんですが、今回も降りていくうちに左膝に違和感が出てきました。それでも、今回はゆっくり丁寧に降りていくことに集中したおかげか、歩けなくなるまでのことはありませんでした。実は、左足は高校時代からの古傷なんですよね。上手に付き合っていくしかありません。
新五合目登山口に戻ってきたのは午後6時ちょうど。下山の所要時間は2時間50分だったことになります。ガイドブックに載っていた「登山5時間、下山2時間40分」と比較すると、登山がずいぶん早かった割に下山は並よりちょっと遅いくらいといったところです。まあ、競争なんかするより確実に登り切ることが大事なんですが。だいたい、ガイドブックに書いてある所要時間自体にかなり幅がありますしね。
一休みして、お土産を買い込んだ後帰路につきました。さすがに登ってきたときのものすごい駐車状況は解消していましたが、それでもまだ変な向きに停まっている車が所々に残っていました。さらに、そんな車に向かって疲れ切った様子で歩いていく人たちも見かけました。新五合目からさらに3km以上の下り坂…私なら間違いなくダウンしています。
富士宮市内で、一日使い込んだ身体をオーバーホールするためにスーパー銭湯に立ち寄り、食事も済ませ、その後は車で浜松に向かいました。帰り道にWeekly SSKの編集をするつもりだったんですが、さすがにそこまで私の身体はタフではなかったようで、道中はかなりの時間眠ってしまいました。自宅にたどり着いたのは午前0時過ぎ。こうして史上初の締め切り遅れとなってしまったわけです。富士山をあまりに甘く見ていたと言わざるを得ません。反省。
ところで、「編集をするつもりだった」と言うとおり、家を出たときの荷物にはちゃんとレッツノート・CF-R2が入っていました。登山するときには車の中に置いていくつもりだったんですが、下山した後でレッツノートがそのままバックパックの中に入っていたことに気が付きました。これにはさすがに呆然としましたね。
普段なら「たった930g」と軽さを誇るところなんですが、命がけの登山の荷物としてはものすごい重さの、しかも全く使わないものを持って行ったわけです。まあ、トレーニング用の重量物だとでも思っておきましょう。ともかく、無事に降りて来られて何よりでした。それよりも、レッツノートを持っていたのなら山頂から誰かにメールでもしたら、いや、サイトの更新だって…と思ってしまった私は、やっぱり重症のモバイル病患者のようです。
コメントを残す