横取り、奪い合い、一本釣り

先週の木曜日・10月28日に、日本プロ野球のドラフト会議が開催されました。ここ2、3年は、日本シリーズの開幕する直前の10月末に開かれるのが恒例になっています。確かに、10球団にとっては既にストーブリーグのまっただ中ではあるわけですが、日本シリーズに出場するチームを応援している身としては、もっとシリーズに向けて盛り上がってくれても良いはずなのに、逆に自分たちだけ蚊帳の外に置かれているような、何とも複雑な気分です。
それはともかく、ドラフト会議は、高校や大学などから出てくる有望な選手たちがどのプロ球団に入るかが決まる一大イベント。この結果次第で各球団の勢力分布が激変する可能性も秘めているだけに、やっぱり注目することになります。今年も、夕方からテレビで生中継されました。仕事帰りの電車の中で、ケータイのワンセグ放送で見てみようかと思っていたんですが、東海道線沿線は意外に受信状況が悪く、あっさり白旗。帰宅してから結果をチェックすることになりました。


ドラフト会議で指名対象になる選手は、事前に「プロ志望届」を提出した高校生、大学生、あるいは社会人野球や独立プロリーグなどに所属する選手たち。大学進学を表明していた高校生の有力選手が、あるチームから強行指名されてあっさり入団…というような「事件」は起こりえない仕組みになりました。開けてびっくり…の面白さはなくなった気もしますが、多くの将来有望な若者たちの将来を決めるんですから、この方がまだ健全なのかも知れません。
今年は大学野球に注目される投手が何人もいて、いったい誰がどこに指名されるのか?という楽しみがありました。様々な憶測が乱れ飛びましたが、ふたを開けてみると各球団が1巡目の最初に名前を挙げた選手は4人だけ。全員が大学野球で活躍した投手でした。
最も多くの球団から指名を集めたのは、早稲田大学の大石達也投手。横浜ベイスターズ、東北楽天ゴールデンイーグルス、広島東洋カープ、オリックスバファローズ、阪神タイガース、埼玉西武ライオンズと、実に半数の6球団が彼を指名しました。
くじ引きの結果、彼との交渉権を獲得したのはライオンズ。渡辺久信監督は、去年も6球団が1巡目で競合した雄星投手の交渉権を引き当てています。恐ろしいほどの強運です。高校生だった雄星投手が今年活躍できなかったのは、さらなるレベルアップの過程として仕方ないところもあるかも知れませんが、大学まで出てきている大石投手では同じ結果は許されません。獲得しただけでは終わりではなく、その後選手を育て、使っていく球団の力が問われます。


東京ヤクルトスワローズ、北海道日本ハムファイターズ、千葉ロッテマリーンズ、福岡ソフトバンクホークスの4球団が指名したのが、大石投手と同じ早稲田大学に所属する斎藤佑樹投手。先日もちょっと触れましたが、あの「ハンカチ王子」が4年間の大学生活でさらに実績を積み上げて、プロへの入口までやってきました。
150km台後半の直球を投げる大石投手のような、わくわくするパワフルさにはちょっと欠ける気がしますが、冷静に試合を組み立てられる、即戦力としての魅力があります。4球団の指名が重なったのは、高校時代からの人気も加味されたものだと思いますが、それもプロとしての能力の一つです。
特にスワローズ、マリーンズの2球団が彼の獲得に熱心でした。両者はそれこそ昨年のドラフト会議が終わった直後の1年前から指名を公言し、スカウトを精力的に送り込み続けていたようです。指名をしたものの、得られるのはあくまでも「交渉権」。入団を断られてしまっては何の意味もなくなってしまいますから、選手に気に入ってもらえるような活動には意味があります。ただし、ルールを逸脱した行為はもちろんアウトですが。
ファイターズは、会議直前まで誰を指名するか迷い続け、斉藤投手を指名することに決めたのはギリギリ直前になってからだったようです。他の選手とも徹底的に比較して、斉藤投手なら自分たちが指名しても入団してくれるはず…という勝算があったからこそ、くじ引きを承知で指名に踏み切ったのでしょうけど、彼の指名にエネルギーを集中させてきたスワローズやマリーンズから見ると、横取りされたような気分でしょうね。まあ、こんな番狂わせも含めてドラフト会議の面白さではあります。


大石投手、斉藤投手のくじ引きに敗れた8球団は、「外れ1位」を指名していくことになりました。しかし、これだけ限られた選手に指名が集まると言うことは、各球団の重視する補強ポイントはもともと似通っているわけで、少ない選択肢からの奪い合いになります。当然、次の候補を指名したらまた他の球団と競合してくじ引きに…ということも起こってきます。
前日に就任したばかりのイーグルス・星野仙一監督も、2回目のくじ引きに臨みました。ここでは、八戸大学の塩見貴洋投手を見事引き当てました。東北地方の大学に所属する、即戦力になるであろう左投げ投手で、「外れ1位」とはいえ最上位での指名に値する選手でしょう。イーグルスとしては大満足の結果のはずです。
他にもまだまだ魅力的な選手が多く、結果的に「大失敗」となってしまった球団はなかったような気がします。それでも、さすがにバファローズのように3度もくじ引きで敗れてしまうと気の毒になってしまいますね。ただでさえいつもちょっと不機嫌そうな顔をしている岡田彰布監督が、何とも渋い顔をしていました。


くじ引きに盛り上がっている裏で、それを横目にほくそ笑んでいた2球団があります。ドラゴンズは、佛教大学の大野雄大投手を単独指名しました。彼も大学では華々しい実績を残し注目されていた選手ですが、肩を痛めてしまい、この秋は全く登板がありませんでした。他にも彼を1位指名で考えていた球団はあったようですが、どうも最終的には身体の故障が嫌われたようです。
ドラゴンズには、過去にも故障で投げられない状態だった日本大学の落合英二投手をドラフト1位で指名して、その後復活させた歴史があります。大野投手の、いかにも故障しそうな豪快なフォームはちょっと心配ですが、これまで「投手王国」を築き上げてきたドラゴンズのスタッフが、彼をどう使って行くのかに期待しましょう。
ジャイアンツは、中央大学の沢村拓一投手を単独指名することに成功しました。彼も150km代後半の速球を持つ、本来なら複数の球団の指名が競合してもおかしくない選手です。しかし、彼の場合は大野投手の怪我とはちょっと違う、他の11球団から敬遠される事情があったようです。
それは彼の「ジャイアンツ愛」。ドラフト会議の対象になる選手が、特定の球団への志向を公言するわけにはいかないので、表だった発言はありませんでしたが、ジャイアンツ以外から指名を受けた場合には、実業団やメジャーリーグという進路も考えていたようです。2度も他球団からの指名をはねつけた長野久義選手のような例もありますし、他球団もせっかく指名したのに入団拒否!というリスクは抱えたくありませんから、競争からはさっさと降りた…というのが実際のようです。
それにしても、この手の話になると、いつまで経ってもジャイアンツが対象になることが多いのは何故なんでしょうか?…それが「栄光の巨人軍」の役目の一つなのかも知れませんけどね。結果的にジャイアンツはうまく「一本釣り」ができたわけで、結果的には誰も泣いていないわけですが、あまりにも彼らの思いどおりに事が進んでしまうのは、ちょっとしゃくに障ります(笑)。


今回は、元ネタも書く内容も週末に入る前にはすっかり揃っていたんですが、公開するのはずいぶん遅くなってしまいました。こんな状況で月曜、火曜とページが更新されないままにしてあると、何とも歯がゆい思いです。年々、思うように時間が取れなくなってきているのは痛感していますが、結局のところ自分の時間の使い方が下手なのでしょうね。何とかならないか、もっと考えてみましょう。



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