先日、久々に所用で東京まで出かけました。東海道新幹線に乗って東京に向かうときには、道中で左手に見える富士山を楽しみにしています。座席を予約するときには、山側のE席→D席の順に探していますが、直前の予約だと窓側はすっかり埋まっていて、D席に座っていることが多いような気がします。

そして、富士山麓を通過するときには写真を撮るのが習慣になっています。ただ、超高速で走っている新幹線からだと、手前を様々な障害物が横切るので、富士山をキレイに捉えるのは容易なことではありません。E席のお客様にお断りして、窓から見える富士山を撮ってみましたが、今回は残念ながら電柱に遮られてしまいました。



これまでなら、「残念だったなぁ」で終わるところなのですが、諦めるのはまだ早い。Pixel 8には、CMでもお馴染みの「消しゴムマジック」という必殺技があります。「カメラ」アプリや「フォト」アプリの画像プレビューの下に表示される編集メニューから、「ツール」→「消しゴムマジック」を選ぶと起動。消したいモノを指で塗りつぶしたり、丸く囲んだりしてざっくり指定すると、自動的に消す範囲が選択されます。


「消去」のボタンをタップしてしばらく待っていると…あら不思議(笑)。富士山の真ん前にあった電柱が、キレイに消えています。あとは、編集結果を確定して、コピーとして保存すれば出来上がりです。

まるで電柱なんて最初からそこにはなかったかのような、クリアな富士山の画像が出来上がりました。「今日も富士山がキレイです」というSNSへの投稿のために使わせてもらいました。
Googleフォトの編集機能では、他にも「ベストテイク」というツールを使ってみています。これは、集合写真で、たくさん撮影しておいた写真の中から、ひとりひとりのいちばん写りのイイ顔を寄せ集めて、1枚の画像を作ってしまおう!というものです。


こちらは、写真を1枚選んで「ベストテイク」を指示すると、Googleフォトにアップロードされている写真の中から、類似した写真を自動で探してくれます。


写真の検索が終わると、写真の下に認識できた人物の顔がずらりと並びます。顔を一つ選ぶと、同じ人物として認識されている顔がずらりと並び、どれを採用するかを選択します。コレを人数分調整すれば、全員がいちばんイイ顔で映っている集合写真の画像が出来上がります。
さすがにこちらはたくさんの方々の肖像権があるので、元画像を公開するわけにはいきませんが、ちゃんと機能することは確認できました。必ずしも全員の顔が複数認識できるわけではないので、完璧には編集しきれないこともありますが、それでも「よりマシな画」にはすることができます。例えば小さい子供たちのように、カメラに向いて集中させるのが難しいグループの集合写真では、結構活躍できるかもしれません。
以前、「写真を撮るか、絵を描くか」という記事を書いたことがあります。スマートフォンの小さなセンサー、薄っぺらいレンズでキレイな画像が記録できる裏には、センサーから得られる情報を使って「画を描く」という部分が大きく作用しているのでは?という趣旨でした。そして、Pixel 8ではこれがさらに進化しているのだな、という実感を強く持っています。
一昨年の段階では、まだセンサーから入ってくる光の情報を元に画を描いていたスマホたちでしたが、今はもう生成AIが「写せなかったモノまで想像して描く」という段階に入っています。イイ顔を寄せ集めてつなぎ合わせるベストテイクはまだしも、消しゴムマジックでは、明らかに情報の足りないところから何かを生み出す必要があります。


先ほどの「消しゴムマジックで電柱を消した富士山」の画像を編集前後でよく見比べると、実は電柱に隠れていなかった部分も元の写真から変化しているのがわかります。手前左から伸びている畦道、中央の建物、奥の新東名高速道路の高架あたりに注目してみてください。
今回は「富士山をキレイに撮りたかった」話なので目立たないのですが、「手前の建物の様子を確認したい」「畦道の地図を作りたい」…のような目的で写真を確認したい人にとっては、これは明らかに事実とは違うものが描かれている「フェイク画像」です。もっとも、細かく見ていくと明らかに不自然に見える箇所もあるので、編集されていることにはどこかで気付きそうですけどね。


ちなみに、Pixel 8のカメラアプリやフォトアプリには、AIによる編集が行われた画像であることが、メタデータとして記録される機能が備わっています。厳密に扱いたいなら、こういうところを確認すれば済む話ではあります。
スマートフォンの内蔵カメラは、写真を「撮る」から「描く」の世界にどんどん進んでいると思っていますし、今後もおそらくそれは続くのでしょう。消しゴムマジックなどのAI編集は、描く写真の世界がさらに1歩先に進んだ…とも言えそうです。ただ、それが「真を写した」写真と呼べるのかどうか、そろそろ自信がなくなってきました。
Pixel 8の消しゴムマジックは、「キレイな富士山が見えた」という記憶の邪魔をする電柱を取り除いて、記憶をより鮮やかに残してくれた…とは言えるわけで、この意味では明らかにイイ仕事をしています。SNSに載せる「映える」写真画像としても上々の出来で、むしろもっと盛っても良いくらいです。その場にあった事実を写し取った「記録」とは言えないのも、これまた確かなことなのですが。
そもそも、銀塩写真の頃から、プロの写真家たちは多重露光したり、極端な露出やフィルターを使ってみたり、現像段階でひとひねりしたり(これはデジタル時代でもRAWデータの加工として生き残っていますが)して、記録を超えた「記憶に残る画」を作ろうとしてきました。工事現場の記録写真ではないのですから、事実の記録でないことに目くじらを立てるのは、ちょっと違うような気がします。本物そっくりの画像を作る方法がいろいろ増えて、誰にでも簡単にできるようになったこと自体は、楽しんで良いのではないかな…と思っています。
生成AIの能力が猛スピードで向上している中で、フェイク画像・動画の出来もどんどん巧妙になっています。もちろん、騙されないように気をつけなくては!ということなのですが、消しゴムマジックなどで自らAI生成画像を作る側に回る人が増えていくことで、「人を騙す画像は簡単に作れるんだ。見るときには気をつけなくては」と疑う習慣は、人々の間に自然に根付くのではないかと思います。フェイクを見破りSNSから削除するようなシステムを開発するよりも、案外その方が近道かも知れません。
それにしても、消しゴムマジックで消せるのは画像の中のモノだけですが、消してしまいたい現実って結構多いよなぁ…生成AIのチカラで、いつの日か何とかならないかしら(苦笑)。

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