先の記事でも触れましたが、3月12日にウィルコムの会社更生手続きの開始が決定されました。これに合わせて、企業再生支援機構やソフトバンクなどとの間で取り決めた再建への基本合意書を締結し、発表しています。
基本合意書によると、PHS事業については出資や融資を受けてウィルコム自身が継続することになっています。そして、私が一番注目していたXGPについては、ソフトバンクなどが設立する新会社に譲渡されるのだそうです。
ソフトバンクといえば、かつて携帯電話事業への新規参入が認められずに、その後当時のボーダフォンを買収する…というとんでもない荒技で参入した過去があります。モバイルブロードバンドへの参入争いでも、選ばれたのはUQコミュニケーションズとウィルコムで、ソフトバンクは勝ち残れませんでした。今回ウィルコムからXGPを「分捕る」ことで、この分野でも一角に割り込むことになります。経営が立ちゆかなくなっている会社を支援する…という建前はあるものの、見方によってはどんな手段を使ってもこの業種に参入してやるんだ!という、強固な意志を感じます。
Yahoo!BBから始まった固定回線ブロードバンドも含めて、強引なやり方ばかりが目に付き、はっきり言ってソフトバンクは嫌いな企業ですが、今のところ「投げて」しまった事業があるわけでもなく、一応企業責任は果たしている…と言えなくもありません。ともかく、せっかくの新技術・XGPを、何とか実用サービスにつなげてほしいと思っています。
しかし、これでウィルコムという会社のいちばん「とんがった」牙が抜かれてしまい、すっかり枯れた技術であるPHSを維持していくのが目的の会社になってしまうわけで、会社とサービスを守るためとはいえ、あまりにも寂しい選択ではないかと思います。
ところで、今回の基本合意書を見ると、もうひとつソフトバンクにとってはとても「美味しい」項目があることに気付きます。それは、「新会社は、基地局ロケーションを譲り受ける。ウィルコムは、当該ロケーションを共用しコストシナジーを図る」(ウィルコムのプレスリリースより引用)というもの。XGP事業を譲渡する上で、当たり前といえば当たり前なんですが、携帯電話よりも遙かに密度が高いPHS基盤の膨大な基地局の権利を得られるわけですから、これは大変なことです。
ソフトバンクは、やろうと思えばこの基地局に自社3G回線の基地局を相乗りさせて、回線品質を劇的に向上させることもできるはずです。もっとも、近距離に携帯電話の基地局を密集させるのは大変なのだそうですが。ずっと設備投資が安価で済む無線LAN(ソフトバンクは既にケータイでの無線LAN利用にも積極的ですね)でネットワークを構築する方法もありますね。
ウィルコムの「美味しいところを食った」ソフトバンクが、今後どんな展開をしていくのか、注視したいと思っています。もっとも、面白いサービスが出来上がったとしても、できればあの会社のお世話にはなりたくないんですが…。
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