あの頃の未来

新しい年、2011年がやってきました。うさぎ年は飛躍の年…などとも言いますが、年が変わったからといって、劇的に何かが変わるわけではありません。家族の未来も背負っているわけですし、あまり無茶はしすぎずに(でもときどきはささやかな無茶も必要ですが)、これまで通り自分のペースで歩んでいくのが良いのかな?と思っています。皆様も、相変わらず日々変化の多い世の中ではありますが、SSK Worldのことも少しは気にかけていただければ幸いです。
この年末、年始の私については、Twitterで時折つぶやいていたわけですが、他にも、やり残した大掃除をちょっと片付けてみたり、床屋に行ってみたりして、あまり遠出などはせず、自宅をベースにしてのんびりとした新年を迎えました。年が変わる瞬間は、ジャニーズのカウントダウンライブのテレビ中継に付き合うのが最近のパターンになっています。先に寝てしまった娘を抱っこしたままジャンプして年を越えることになりました。


以前にも紹介していますが、ほとんど本は買わない私が、現在でも毎月定期購読しているのが、科学雑誌のNewton(にゅーとん)。創刊された1981年から欠かさず愛読しています。今年の夏で創刊30周年を迎えますが、オールカラーで美しいイラストや写真をふんだんに使った記事は、創刊当時から全く変わっていません。さすがに、置き場所に困ってしまうので自宅に全巻保管することはやめてしまいましたが、今でも毎月家に届くのを楽しみにしています。
Newtonには、毎月の定期刊行の他に数多くの別冊が存在します。最近では昨年地球に帰還した小惑星探査機・はやぶさをテーマにした別冊を購入しました。本誌同様の美しいイラストや写真、そして長年培った専門的視点で切り込んだ文章の記事も魅力です。
別冊の方は、古いものを処分せずに自宅に保管してありましたが、この中に「21世紀はこうなる」と題されたシリーズがあります。1980年代後半から、年に1回程度定期的に発売されていた、科学技術の未来予測をテーマにしたシリーズで、我が家には5冊が残っています。さすがに90年代に入ると、あと10年以内に迫った2001年をターゲットにするのは夢がなさ過ぎると思ったのか、2010年を目標に置いた記事作りが行われていました。
しかし、その2010年もついに過ぎ去りました。20数年前の科学技術に携わる皆さんが思い描いていた2010年はどんなものだったのか、そして現在はその姿にどれだけ近づいたのか、あるいはどんな違いが出てきたのか…そんなことを思いながら、5冊の本のページをめくってみました。


1980年代後半といえば、バブル経済の絶頂期。「21世紀はこうなる」の誌面には、大規模な建築・土木技術による、いかにも未来的な未来都市や、月や火星に基地が建設されるような華々しい宇宙開発の姿が広がっています。21世紀初頭の実現を目指した大型プロジェクトも数多く紹介されていました。
振り返ってみると、多くのプロジェクトは未だ現実のものになっていません。リニアモーターカーによる中央新幹線は、「JR東海は2000年には走らせたいと言っている」なんて景気のいい話も出てきていますが、実際にはようやく建設に向けての動きが現実化し始めたところです。月や火星への進出は、さすがにもっと先の話として描かれていましたが、無人の探査機こそいくつか飛んではいるものの、有人の宇宙飛行はアポロ計画以降はごく低空の衛星軌道にとどまったままで、とても現実的なビジョンは描けない状況です。
一方で、当時の予測を遙かに超えるスピードで変化してきたのが情報通信技術関係。「21世紀はこうなる」の中では、ICカード等に記録されたデータを読む電子書籍のイメージが登場していますが、現在一般的になってきた電子書籍のサービスには、ハードウェアとしての供給メディアは存在しません。本の活字や挿絵どころか、高音質の音楽も、ハイビジョン画質の動画も、データが通信回線に載って届くのが当たり前。いつでも、どこでも、無線による高速な通信が利用できるのが現実の2010年です。


未来を語ろうとすると、バラ色の話ばかりで終わることは出来ません。地球温暖化やオゾンホールは、当時から将来の問題ではなく今目の前にある課題として認識されていました。また、科学技術の枠内で語るのはちょっと違う気もしますが、ライフスタイルの変化に伴う少子高齢化についても触れられています。
現実の2010年は、これらの問題については彼らの予測に近い形で推移しています。ただし、その速度は予測以上のようです。当時、日本の人口が減少に転じるのは2010年代と見られていましたが、現実には2005年から人口の減少は始まっています。これに連動するように、高齢化率は予測より高くなっていて、今や「5人に1人」と言うより「4人に1人」が65歳以上となっています。


本を見返してみて思うのは、科学技術そのものは当時の予想をあまり裏切らずに進歩してきていること。80年代の人々が描いた未来予想図が実現できていないのは、むしろ技術的な問題以外のところに原因があります。技術的には確立していても、それを実行に移せるだけの条件が整わないんです。
おそらく最も大きな制約は実行に移すための費用です。これらの本が発売されたあとにバブルがはじけて、財政事情が厳しくなっていったのは、日本だけに限った話ではありません。あれだけ突っ走っていたアメリカの宇宙開発ですら、年々予算を削減されてしまい、思ったように計画が進められない状況です。経済が右肩上がりなのが当たり前という時代は、既に過ぎ去っていたとは思うのですが、それにしても様々な試練が世界を襲ってきたのがこの20年間だった気がします。そして、経済的な制約が研究開発予算の削減にも影響を与え、さらに進歩の速度が鈍る…という悪循環になります。
さらには、これが個人レベルでの経済的な困難につながり、子どもを育てられる環境の人が減少し、少子化の進行につながっている…なんて話もあります。科学技術の進歩だけではどうしようもない状況の変化なのかも知れませんが、一方でこんな状況を打破するために必要なのも、技術的なブレイクスルーだったりします。少なくとも、これまでと全く同じことをしているだけでは、変化もありません。
平成23年度の日本政府の予算案の中では、科学技術関係の予算が大幅に増額されているのだそうです。多分に「はやぶさ効果」があるでしょうし、他の面ではこの予算案は問題だらけだと思っていますが、沈滞した状況を打破するために必要なのは新しい技術です。この点では評価するべきだと思っています。もっとも、研究開発は来年度予算が付いたからすぐに成果が出るという性質のものではありませんから、継続しての支援が必要なんですが、毎年内閣が替わっているこの国の政府に、一貫して継続的な政策が打てるのか…正直なところ、不安たっぷりです。



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