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物足りない理由

水曜日・16日に、映画「アナと雪の女王」のディスク媒体の販売が始まりました。また、レンタルショップでのレンタルも始まっています。日本では今年3月から映画館での上映が始まったこの作品は、今のところ興行収入が歴代3位という空前の大ヒット。今年上半期では最大の話題作と言っても良いでしょう。ここ数年は、なかなか映画館に行けなくなってしまいましたが、こうしてあまり待たずに家でも楽しめるのは嬉しいことです。

我が家では、ブルーレイディスクとDVDのメディアが各1枚封入された上に、デジタルコピーのダウンロード権が付いている、「MovieNEX」と呼ばれるパッケージを購入しました。我が家の場合、家ではブルーレイで、車内ではDVDでの視聴が可能で、さらにスマートフォンへの動画読み込みまで出来てしまう、なかなか美味しい商品なんですが、ニーズに合わない人たちには「余分なものまで付いてくる」と不評らしいですね。

特に、ブルーレイ3D版が欲しい人は、このMovieNEX版を購入した上で、オンラインショップで注文しなくてはなりません。一時期、家電メーカー各社が「3Dテレビ」を大々的にアピールしていたわけですが、残念ながら全然普及せず、3D視聴環境は家庭ではとてもメジャーとは言えない状況。こういう対応になるのは仕方ない面もあるのかも知れませんが、こんなまどろっこしい方法を採らなくても、ダイレクトにネット直販で売ってもいいような気がします。


皆さんよくご存じかと思いますが、「アナと雪の女王」はディズニー制作のアニメ映画作品。アンデルセンの童話「雪の女王」を下敷きに書かれたオリジナルの物語になっています。とはいうものの、恥ずかしながら私は日本での公開直前までこの作品のことはほとんど認知していませんでした。

公開直前の今年3月、同じディズニー制作のアニメ映画「塔の上のラプンツェル」がテレビで放映されましたが、このときに「アナと雪の女王」の冒頭の数分間が予告編として流されました。映画館での公開直前に関連作品をテレビ放送する…というのは、マーケティングの常套手段なんですが、このときに私は初めてこの作品の存在を知り、「これは見てみたいかも」と思いました。

興味を持った最大の理由は、劇中の楽曲が「本格的にミュージカルしている」と感じたこと。もともと、ディズニーのアニメ作品にはミュージカル仕立ての名作が数多くあるわけですが、ひとつひとつの曲が実に「聴かせる」曲に仕上がっています。アニメ作品として…というよりも、ミュージカルとして観てみたい!と思ったわけです。

妻も同じことを思ったようで、映画を見に行く前にサウンドトラックを購入し、何度も繰り返し聞いていました。通して聴いてみると、やはり良く出来た名曲揃いで、映画本編がどんなモノなのか期待が高まりました。


ところで、先に触れた予告編は原語である英語版ではなく日本語版の音声で、台詞だけではなく歌声も日本語で吹き替えられています。吹き替え音声なのに本格的に歌ってるじゃないか…というのが、私の驚きの根底にありました。

私は予告編を見た後で知ったんですが、日本語版で主役のアナを演じるのは神田沙也加、もうひとりの主役エルサを演じているのは松たか子。ふたりとも台詞と歌の両方をこなします。ふたりとも誰もがよく知る二世タレントですが、あえてそのことに触れる必要は全くない、実力で実績を積み重ねてきた「歌える女優」ですね。

そんな経緯があったので、いつもなら洋画は必ず最初は「原語音声・日本語字幕」で観る私が、今回はさんざん迷ったあげく、あえて最初の鑑賞で「日本語音声・字幕なし」という選択をしました。その後で、いつもの通り「英語音声・日本語字幕」で観ています。

いつもだと、後で聴く日本語版の音声に違和感を感じてしまうことが結構多いんですが、今回は先に聴いた日本語版の音声の方がイメージに良く合っているような気がします。先入観とか、錯覚とか、あるいは母国語の方がわかりやすくて有利…とかいう部類のものかも知れませんが、少なくとも日本語版の音声が原語版に当たり負けしないだけのクオリティで作られているとは言えそうです。

今回特に強く感じたのが、日本語版の台詞と英語版の台詞の日本語訳で、かなり違った印象を受けること。それも、部分的な言い回しなどの問題ではなく、キャラクターの性格付けがそもそも違うように感じました。限られた時間(音節数)の中で、日本語は英語と比べると短時間に多くの情報を載せにくい…ということもありそうですが、それ以上に、英語圏の人たちに受け入れられやすいキャラクターと、日本人に受け入れられやすいそれとの差が明確に意識されて、その上で翻訳を考えているのでは?と感じます。賛否両論あるかも知れませんが、これが真のローカライズと言えるような気がします。

まだ見ていない方にネタばらしをするのは嫌いなので、あまり細かい指摘はしないことにしますが、特に「雪の女王」エルサについてその差を大きく感じます。皆さんも是非ディスクを手に入れて、日本語版と英語版の台詞を比べてみてください。あと、是非試していただきたいのが「日本語音声・英語字幕」での視聴。少々英語の理解力は要求されますが、リアルタイムで差を聞き比べることが出来ます。


ストーリーについては、いかにも最近のディズニーらしい…という思いが強かったですね。王女が登場して「真実の愛(True Love)」をテーマに掲げるのは伝統的なひな形ですが、それをいかに意表を突いた形で表現するのかを、制作側が楽しんでいるように見えます。特に、この作品の場合、呪いを解くのは王子様のTrue Love Kissであることが一般常識である前提で、全ての登場人物が行動していくところに面白さがあります…これ以上は、やっぱりネタばらしになるので言えません(笑)。

ストーリー自体は面白いと思ったんですが、見終わった後には何故か物足りなさが残ります。これは、日本語版でも英語版でも変わりません。何故なんだろう?と考えてみたんですが、どうも原因は後半にテンポが急激に加速していく展開にあるような気がします。あまりにもバタバタと終盤が進んでいくような感じを受けました。最も重要なポイントのひとつになるはずのあの人物の豹変は、あまりに唐突で、もう少し伏線があっても良い気がします。

このことを象徴するのが、劇中歌の配分。サウンドトラックには全ての劇中歌が収録されているんですが、これが作品の前半でほとんど出尽くしてしまいます。終盤のいちばん盛り上がってほしい部分に、歌が全くありません。私がプロデューサーなら、後半に最低でもあと2箇所は歌を入れたい場面がありました。

もっとも、これは私が「アナと雪の女王」をミュージカル作品として見ているからこういう発想になるんですよね。ミュージカルなら、いちばんの見せ場を歌で彩るのは当たり前。しかし、小さな子供も見るアニメ作品として考えた場合、これ以上楽曲が増えると作品が長くなりすぎて、子供たちが集中力を最後まで持続できなくなりそうです。「ハリー・ポッター」シリーズの映画なんて、原作は児童文学なのに、子供たちにはあまりにも1本1本の上映時間が長すぎますよね。


最後に、SSK Worldらしい余談を少々。この作品は3次元CGベースで作られたアニメーションですが、見ていて感心するのが、雪や氷の描写が実にリアルなこと。これらの描写については、どうやら物理演算を多用しているようです。氷の結晶がどのように形成されていくかを考慮して、簡単に造形できるようなソフトウェアが作成されたのだとか。

とはいえ、最終的には全てを物理演算で自動的に…ということではなく、手作業での修正は常に発生していたようです。映像作品として見せるときに、リアルであることだけが全てではありません。特にアニメでは、あえてリアルを踏み外し、デフォルメすることで出てくる味もあると思います。だいたい、純粋にリアルさを競うだけなら、アニメはどうやったって実写映画にかないませんからね。



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