小宇宙を覗く・リターンズ

「小宇宙」と言えば、人体の持つ巧妙なシステムを形容する表現として使われます…と書いたのは、もう4年以上前のことになります。あのときには、「小宇宙を覗く」と題して、大腸の内視鏡検査の体験レポートを書きました。初めての体験でいろいろ得るものがあったのは確かですが、何度も受けたい検査ではないな…というのが正直な感想でした。しかし、人生そうそう甘いものではありません。今回は、またしても人体の小宇宙を覗く羽目になったお話です。


例年通り、8月に職場の胃検診が行われました。あの猛烈に不味いバリウムを飲まされて、気持ち悪いのを我慢しながらX線撮影の台に乗せられてぐるぐると回されるわけですが、今年はなかなか終わってくれません。同じところで右に、左にと回され続けます。気持ち悪さに加えて湧き上がってきた猛烈な不安感とも闘いながら、言われるがままに回り続けました。

検査の最後に、「前に『ポリープがある』って言われたことがある?」と聞かれました。そう言えば、数年前に一度だけ、職場から渡された検診結果に「胃ポリープ」と書いてあったことがあります。そのときには「心配なし」とも書かれていたので、それほど気にはしていなかったんですが…。とりあえずその通り答えると、「普通よりも大きなポリープがあるねぇ。再検査にしようと思ってるから」との返答が。検査結果が送られてくるよりも前に、再検査の内定をもらってしまったわけです。

1週間ほど後に、検査を担当した病院の健診センターから封筒が郵送されてきました。「胃ポリープの疑い。要精密検査」と書かれた文書が入っていたのは想定の範囲内だったんですが、びっくりしたのは「胃ファイバー」と書かれた再検査の予約票が同封されていたこと。「当日来られない方は、必ず健診センターにご連絡を」との文言まで書き加えられていました。もちろん、「胃ファイバー」というのはいわゆる胃カメラによる内視鏡検査。こうして、「小宇宙を覗くツアー・リターンズ」に招待される…というより強制参加させられることが決定しました。


大腸内視鏡の場合と違い、胃の内視鏡検査には大がかりな準備は必要ありません。X線撮影と同様に、前日夕方以降の飲食が禁止になるだけです。夏の暑い時期に、水も飲めないのはちょっときつい…ということはあるわけですが。

しかし、それ以上に困ったのは、最初に「ポリープがある」と言われた日から胃の調子がすっかりおかしくなってしまったこと。もっとも、これは間違いなく神経性のものですよね。ポリープは胃検診よりもずっと前からあったはずですから、これが原因とは考えにくいですし。胃は、精神的なものに最もデリケートに反応する臓器の一つです。


予約が9時45分と指定されていたので、9時15分頃に着くように健診センターに向かいました。しばらく待たされて、名前を呼ばれたのが9時40分頃。総合の受付から内視鏡科まで案内されました。病院の予約時間なんて全然当てにならないと思っていたんですが、あまりに時間ぴったりでちょっとびっくりしました。

事前の準備は要らないとはいえ、さすがに病院に行っていきなり胃カメラを飲むのは無理。最初に胃の中の発泡を抑える薬を飲み、その次に喉を麻酔する薬を飲みます。この麻酔薬、半分を飲み込んだ後、残り半分は口の奥の方で3分くらい留めておき、時間が来たら吐き出すように指示されますが、吐き出す作業が意外に難しいんですよね。そのときには麻酔で喉が思うように動かないんですから。思いっきりむせてしまい、周りで同じように寝ている人たちの注目を集めてしまいました。


10数分待った後、いよいよ診察台の上に移動します。ここで「苦痛を和らげる」という注射を打たれ、口には筒をくわえさせられました。高価な内視鏡を噛み切られては困るでしょうからね。内視鏡のファイバーの直径は約1cm。見たところ、大腸用の内視鏡と全く同じように見えます。さすがに、それぞれの検査に使う内視鏡は流用されていない…と信じたいところです。実際には、きちんと消毒をすれば問題はないはずなんですが。

麻酔がかけられているとはいえ、喉から食道に内視鏡が通されているときには、筆舌に尽くしがたい違和感があります。ちょうど目の前の少し上あたりに内視鏡のモニター画面がありましたが、もだえ苦しんでいる私にはとても見る余裕がありません。初めて画面に目が行ったのは、先端が胃に到達した後でした。実に色鮮やかで、解像度も高いですね。

程なく、胃壁に張り付いているポリープが見つかりました。内視鏡のファイバーの中に、さらに細い線を出し入れしながら、作業が始まりました。ポリープを管のようなもので吸い付けて引っ張ると、ポリープは見事に胃壁から剥がれて内視鏡の先端にくっつきました。そのとき、先生の発した言葉は、何と「…あ、取れちゃった」。どうやら、ポリープの組織を一部採取するつもりが、丸ごと取れてしまったようです。当然、胃壁は出血で真っ赤に。すぐに止血剤が塗られて、程なく出血は止まりました。

これだけ派手にいろいろなことが行われているのに、私は全然痛くないんですよね。すっかり麻酔が効いているのか、それともそもそも痛みを感じる神経が通っていないのか。でも、「胃が痛い」という経験は何度もありますから、やっぱり麻酔の効果なんでしょうね。

これで作業が終わり、内視鏡は喉から体外に出てきました。先端に付いていたポリープを見せてもらいました。小指の先…あるいはちょうど小豆くらいの大きさの、ピンク色の固まりでした。これから組織の検査をするということで、さすがにお土産にいただくことはできませんでした。いただければ、記念にホルマリン漬けにでもしてみようと思っていたのに…残念。


検査の10日後。また検診センターから封筒が郵送されてきました。あらかじめ「検査結果は郵送されます」と聞いていましたが、いざ送られてみるとドキドキするものです。まあ、検査当日に緊急入院させられたりしなかったわけですから、最悪の事態でないことだけはわかるんですけどね。

結果は「心配なし」とのこと。採取した組織からも、悪性(いわゆる「がん」ですね)の所見は認められなかったそうです。母のがん病巣が初めて見つかった年に近づいてきて、改めて自分の健康について考えさせられます。少なくとも、定期的な検診を受けて、体のチェックは怠らないようにしようと思っています。



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