掌の上にWindows

以前から、持ち歩いてどこでも使えるWindows環境が欲しい…という話はたびたびしているわけですが、そんな私にとって、かなり気になるアイテムが、昨年末あたりから巷に出回り始めています。

それは、8型クラスのディスプレイを持ち、Windows 8.1で動くタブレットたちです。A5判用紙程度の大きさで厚さ10mm程度…というコンパクトな筐体は、重量も500gを大きく下回り、掌に軽く乗せられるほど。私たちが従来「持ち運べるWindows環境」としてイメージしていたモバイルノートPCとは、全く別次元の携帯性を実現しています。それでいて、Windows 8.1は十分実用的なレベルで動作し、バッテリーのみで丸一日動かせるほどのスタミナもあります。

商品としてはiPad miniや7型クラスのAndroidタブレットあたりと競合するところになりますが、彼らの強みになっているのがパソコン環境を「そのまま持ち歩ける」こと。パソコン用のWindows 8.1と全く同じものが動作しているので、Microsoft Officeを始めとしたパソコン用のアプリケーションがそのまま動きますし、USBやBluetooth経由で、以前から使っていたWindowsパソコン向けの周辺機器の数々もそのまま使えます。iPadやAndroidタブレットのように、Windows環境と連携させるために頭を一ひねりしたり財布をひっくり返したりする必要はありません。


8型Windowsタブレットは、簡単に持ち出して出先でも職場と同じ環境で仕事ができる「ビジネスマン御用達のタブレット」として静かなブームと…なるのかと思っていたら、思わぬところで爆発的ヒットを呼ぶことになりました。

DMMがネット上で配信している「艦隊これくしょん~艦これ~」というゲームが、ちょっとしたブームになっているのだそうですが、iPadやAndroidタブレットでは遊べない「艦これ」が、Windowsタブレットなら動作します。これは、「艦これ」のシステムがAdobe Flashで作られているため、Flashをサポートしない「先進的な」ブラウザ環境を持つiOSやAndroidでは動作しない…ということだそうですが、パソコン環境がそのまま持ち込める特徴が、ここでも生きたわけです。

「『艦これ』を持ち運べるタブレット」として注目を浴びた8型Windowsタブレットは、製品によっては発売当日に店頭から姿を消すほどの売れ行きを見せ、最近あまりパッとしなかったWindowsパソコン関係では、久々の明るい話題になっています。情報機器関連全般を見渡しても、今最も熱いカテゴリーと言えるかも知れません。


8型Windowsタブレットは複数のメーカーからの製品が登場していますが、ほとんどの製品に搭載されているのがAtom Z3740です。AtomはIntel社の製造する低消費電力のプロセッサーのブランドで、3000番台の型番は、それが第3世代であることを示します。1.33~1.86GHzで動作するクアッド(4個)コアのCPUに、グラフィックス等の周辺コアも組み合わされて1チップに載っているSoC(System on Chip)です。

Atomといえば「低消費電力だけど処理能力もかなり残念」というイメージが強くありました。最初の頃のAtomは、Windowsが「動作する」と表現するのが危ういくらいのレベルでしたが、それでも従来の常識を破る小型化に成功した…という功績はあります。私も、一時期Atom搭載のモバイルノートPC購入を、かなり真剣に考えていました。スマートフォンレベルの大きさに強引に押し込んだ「Windows 7ケータイ」もありましたね。

第3世代のAtomでは、上位シリーズのIntel Core iシリーズの技術を取り入れて、課題であった処理能力をかなり向上させながら、Atomならではの省電力も両立しています。さすがにスピードではCore iシリーズにはかなわないものの、Windows 8.1を動作させるくらいなら楽勝レベルです。

実は、12月の頭に気になる「モバイルノートPC」として11.6型WindowsタブレットのVAIO Tap 11を取り上げながら(キーボード標準添付で、多分にノートPC的ではありますが)、8型Windowsタブレットには見向きもしなかったのは、まだ実際に触れていなかっただけに、Atom搭載機のパフォーマンスに大きな不信感を持っていたからでした。

しかし、店頭に並び始めた製品に実際に触れてみると、イメージは一変しました。全くストレスなく操作できるようになっています。第1世代Atom Zシリーズ採用製品が、WindowsのUIを動かすことにすら四苦八苦していたのとは大違いです。これなら、おそらく我慢しなくてはならない場面は多くないでしょう。


各社から出そろってきた8型Windowsタブレットの中で、現在私が一番気になっている製品が、1月31日から販売開始となったThinkPad 8です。あの「ThinkPad」ブランドの後ろに、数字がひとつ書いてあるだけ…という、実にシンプルなネーミング。そこに、この製品を送り出したレノボと開発陣の気合いが見えてくる気がします。

他社の製品や同社が先行して投入したMiix 2 8との最大の違いは、8.3型で1200×1920ピクセルの高解像度画面と、より高速なAtom Z3770プロセッサを搭載したハイスペック設計。現時点では、このカテゴリーではオンリーワンです。それでいて、重量は400g台前半、厚さは8mm台、バッテリー動作時間は8時間と、スペックを盛るために他を犠牲にせず、他製品との競争力を保ったレベルに収めています。

魅力はスペックだけではありません。もう一つ、重要なThinkPadクオリティが堅牢性です。ThinkPad 8でも、様々な品質試験の結果「ThinkPadに相応しい堅牢性」を実現しているのだそうです。タッチパネルに「Dragontrail」という日本製の強化ガラスを採用しているのがひとつのポイント。そもそも、ThinkPadシリーズの開発も日本で行われてきたわけで、日本人のひとりとしては嬉しいところです。おそらく製品自体はMADE IN CHINAなのでしょうけどね。

気になる価格は、4万円台で販売されている他社製品よりは少々高価な5万円台からの価格設定になっていますが、スペック表だけでは計れないいろいろな差を考えると、十分納得できるところです。専用オプションもいろいろ発表されていますが、ワンタッチでカメラを起動できる専用カバーと、Bluetoothで接続できるThinkPadキーボードは気になります。

経済的に余裕があれば即注文したいところなんですが、今はちょっとそれができる状況にはありません。とはいえ、レッツノートほどの高嶺の花ではありません。地道に貯金して、いつか手に入れたいな…と思っています。もっとも、その前に動作する現物にちゃんと触れてみなくてはなりませんが。実のところ、こんなモノが本当に作れるとは、にわかには信じがたいのです。


ThinkPad 8でちょっと不満なのが、海外向けでは用意されているLTEモジュール内蔵の製品が、日本向けには投入されないこと。そして今どきのモバイル端末には重要な存在であるGPSのセンサーも内蔵されないことです。常時高速通信が可能な環境と現在位置の情報は、移動しながら使う端末には必須だと思っています。この両方を標準で使いこなせることが、スマートフォンの他のデバイスに対する優位性でしょう。

幸い、ThinkPad 8の製品発表会では、日本でのLTEモジュール内蔵仕様の投入を検討していること、そして、投入されるとすればその際にはGPSも同時に装備される(LTEモジュールにGPSが内蔵されているんですね)ことが明らかにされました。貯金しているうちに、製品が登場することに期待しましょう。そのときには、他社からも魅力的な対抗馬が登場しているのかも知れませんけどね。



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