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デザインのコストと価値

11月16日に、バルミューダから「BALMUDA Phone」が発表されました。26日から販売されます。5月にスマートフォンへの参入を発表した際には、「5G対応で、11月以降の発売を予定」「端末製造は京セラが担当」「ソフトバンクが取り扱う。SIMフリーとしての販売も予定」とのことでしたが、今のところ発表どおりの展開を実現できていることになります。

バルミューダといえば、扇風機やトースターなど、独特の世界観を打ち出した商品開発で、プレミアムなブランドイメージを作ってきた家電のメーカーですが、スマートフォンへの参入については、少なからぬ驚きを持って迎えられました。激しい性能競争・価格競争にさらされ、差別化が非常に困難な分野で、どのような形で彼らの世界観を表現するのだろうか?というところが、私の興味の中心でした。おそらく、多くの方々が同じような思いで今回のリリースを待っていたと思います。


お披露目されたBALMUDA Phoneは、「曲線だけでデザインされた」という、4.9 型フルHDの画面を持つコンパクトなAndroid 11端末。プロポーションとしては、横幅は普通にやや細め、長さがずいぶん短い…という感じです。背面も曲面になっていて、確かに最近はあまり見ないデザインですが、初期のiPhoneにもどことなく似ています。

ときどきこういう形状の端末は登場しますが、テーブルに置いたときの据わりが悪いんですよね。最近のスマートフォンのデザインが、余計なものを極力削ぎ落とした「板」に近づいてきたのも、それなりに機能を考えた結果だと思うのですが、バルミューダとしては手で持ったときの質感にこだわって、あえてこうしたようです。

システムプロセッサーに採用されたのはSnapdragon 765。搭載カメラも前後ひとつずつということで、IPX4の生活防水、おサイフケータイこそ載っているものの、スペック的にはミドルクラスかそれよりもやや下…といったところではないかと感じます。

それなのに、SIMフリーで104,800 円から…というあまりにも強気な価格設定は、いくらバルミューダでも、これはさすがに高すぎるのではないか?という声が多く上がっています。私も正直なところそう感じました。同等のスペックの中華スマホなら2~3万円です。独自設計(後述のアプリも含む)のプラス分を見込んでも、適正価格帯はせいぜい5万円くらいのところではないでしょうか。

おそらく、単にふっかけているわけではなく、生産予定台数が少ないから安価にできないのだと思うのですが、スケジューラーや電卓、メモパッドなど、独自のアプリを結構作り込んでいることも、価格が上がった要因のひとつではないかと思います。ただ、アプリ開発におカネがかかる…というのを、一般のユーザーはあまり理解してくれないんですよね。アプリ自体はなかなかよくデキているように見えるだけに、辛いところです。

ハードウェアで独自色を出すのにも限界がある中で、アプリのデザインで勝負するのはアプローチとしてはあり得るのですが、Android機の場合、Googleが好き勝手にアップデートするのにメーカーが合わせていかなくてはならない…というリスクもあります。往々にして、独自部分が多いほどバージョンアップは遅れます。この点、常にハードウェアとソフトウェアが同時開発のiPhoneは強いですよね。


スマートフォンのような高度な情報機器を専門としないメーカーが、デザインにこだわって独自設計のスマートフォンを販売する…という取組には、すぐに思い出す先例があります。スマホ用アクセサリーを販売していたトリニティが取り組んだ、NuAns NEOプロジェクトです。

NuAns NEO [Reloaded]。上下2分割の着せ替えカバーが特徴的

私自身も、Android機になった2代目の端末・NuAns NEO [Reloaded] を使っていた時期がありましたが、上下2分割の着せ替えカバーで個性を表現できる…というのは、なかなか面白い仕掛けだったと思っています。しかも、このカバーが初代、2代目の端末で共有できる…というのもよく考えられていました。

ハードウェアとしてはミドルクラスの設計だったのは、ちょうどBALMUDA Phoneと近いレベル。ただ、価格は5万円程度で、デザインのプレミアム分は1~2万円という感覚でした。ソフトウェアとしてはほぼ素のAndroid(カメラは独自のものを作るしかないのだそうですが)だったことを考えても、こちらの方がずいぶん良心的な価格設定です。少なくとも、私は納得できました。

プレミアムブランドとしてのイメージを前面に出してきたバルミューダとしては、スマートフォンもプレミアムであってほしいところで、そのためには高めの価格設定も大事な部分かも知れません。とはいえ、コスト相応の価格、価格相応の価値というものをどう捉えるか?という話もあるわけで…。スペックだけを見てしまうとBALMUDAのロゴ1文字あたり1万円くらいになりそうなところで、デザインへの対価として評価し、購入する気になってくれるユーザーが果たしてどのくらいいるのか?というあたりが、BALMUDA Phoneのビジネスとしての成否を決めることになりそうです。

企業体力としてはトリニティより相当に強靱なはずのバルミューダ。それでもスマホの世界での闘いは相当厳しいものになると思いますが、どこまで頑張ってくれるのか、注目しましょう。…ワタシは、買う気がしないけどなぁ。



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