ThinkPad X13 Gen 6 Intelについては、既に多くの方々がWeb媒体にレビューを投稿していて、そこでは様々なベンチマークソフトの計測結果が公開されています。私がわざわざ改めて走らせるよりも、皆さんの結果を見ていただけばいいですよね…となれば楽だったのですが、実はそう簡単な話ではありません。

レノボがプロのレビュアーの皆さんに貸し出しているX13 Gen 6 Intelは、プロセッサーがCore Ultra 5 225U、ストレージは256 GBのPCIe Gen4x4という、スペックとしては最低ラインに近い仕様になっています。自腹で購入している皆さんも、プロセッサーにはCore Ultra 5 225Uを選んでいることが多く、PCIe Gen5x4の高速SSDを搭載しているのも見かけません。

プロセッサーにCore Ultra 7 255Hを選ぶと、Core Ultra 5 225UとはCPUのコア数も、世代も、GPUの仕様も別物になりますが、多くのレビュアーの方々が、放熱面の不安を理由に本来の性能が発揮できるか疑問視しています。SSDについても、PCIe Gen5x4の高速な製品は発熱も大きいとされ、こちらも同様な疑問がつきまといます。この商品の性質上、パフォーマンスの高さより携帯性が求められるので、発熱が多い→消費電力が多い→バッテリーでの動作時間が短くなる…と考えると、これらを搭載しないのは当然の選択ではあります。

私は新しい世代の仕様、新しい機能の装備を重視してこれらの搭載を決めたわけで、絶対的な性能の高さを目指したのではありませんが、実際のところどのくらいの性能が実現できているのか、気になる方はいらっしゃるはずですし、もちろん私自身も気になっています。実際に測ってみて示すのは、オーナーである私の使命であり、義務だと思います。…ということで、巷でよく見かけるヤツを、いくつか試してみることにしましょう。


電源モードの違いでかなり結果が変わるようです

ベンチマークの結果をお知らせする前に一つ押さえておきたいのが、Windows 11のシステム設定にある「電源モード」の話。電力消費とパフォーマンスのどちらを重視して制御するか、選択できるようになっています。

ThinkPad X13 Gen 6 Intelの場合は、初期状態では電源に接続した場合、バッテリー駆動の場合のどちらでも、3段階の真ん中になる「バランス」という設定になっています。これを「最適なパフォーマンス」に変更すると、ベンチマークの測定結果がかなり伸びるらしく、巷のレビュー記事の中にも、「最適なパフォーマンス」に切り替えて測定したり、2設定で計測した結果を併記したりする例が見られます。ワタシも、これに倣って「最適なパフォーマンス」「バランス」の2パターンで計測してみます。

なお、AC電源に接続した場合は、電力消費にそれほどシビアになる必要もないと思うので、今回に限らず普段から、電源に接続すると「最適なパフォーマンス」になるように設定を変更しています。モバイルバッテリーなどに接続したいときには、その都度切り替えましょう。Fn+F8キーのショートカットで、簡単に変更できます。


最初は、Cinebench 2024から。3次元CG制作アプリ・Cinema 4Dのレンダリング(画像を生成する)エンジンを使って、主にCPUの処理速度を評価します。

最適なパフォーマンスバランス
CPU (Multi Core)710470
CPU (Single Core)117113
Cinebench 2024

電源モードの違いで、特にマルチコアの評価スコアがずいぶん違うのがわかります。これが他の製品と比べてどのくらいの位置にあるか?というところがポイントになるわけですが、例えばCore Ultra 5 225Uを搭載したX13 Gen 6だと、「最適なパフォーマンス」モードでマルチコア500前後、シングルコアは100強といった感じ。Core Ultra 7 255Hでは「バランス」モードでの計測でこれとほぼ同じ結果になり、「最適なパフォーマンス」モードでは明らかに勝っています。

ただ、これを他社のCore Ultra 7 255H搭載製品と比べてみると、中にはマルチコアで1,000近いものもある中で、X13 Gen 6での結果はやや見劣りします。軽量・コンパクトな筐体に収める関係上、発熱のコントロールが厳しめなのかも知れませんね。今どきのCPUは、電力枠もベンダーがある程度自由に決められるので、やや低電力側に振った設定にしているのかも知れません。


次は3DMarkのテスト。20世紀からシリーズが続いている、3Dゲームのプレイ画面を想定して作られた、主にGPUの性能を測るベンチマークです。ハードウェア・ソフトウェアの進歩に合わせて、最新の機能を取り入れた「重い」テストを市場に送り込み続けています。

最適なパフォーマンスバランス
3DMark Score3,4663,385
3DMark|Steel Nomad Light

「Steel Nomad Light」は「軽量PC向けのクロスプラットフォーム型非レイトレース・ベンチマークです。WindowsではDirectX 12 APIをデフォルトで使用します」と説明されています。x64、Arm両プラットフォームのWindowsの他、iOSやAndroidのデバイスまでカバーする、最新版のテストになります。

「最適なパフォーマンス」は「バランス」よりわずかに高い数値になりましたが、CPUほどの歴然とした差は見えません。ただ、Core Ultra 5 225Uを搭載したX13 Gen 16の「Intel Graphics」GPUでは1,500前後の数値になっているのと比べると、Core Ultra 7 255H搭載の「Intel Arc 140T」GPUは2倍以上のスコアを叩き出しています。圧倒的な差と言って良いでしょう。ただ、Cinebench 2024の結果と同様、他のCore Ultra 7 255H搭載機の成績と比べると、数字の伸びは今ひとつです。

最適なパフォーマンスバランス
3DMark Score26,99420,333
Graphics Score35,05128,112
CPU Score11,7247,918
3DMark|Night Raid

「Night Raid」は、「統合グラフィックプロセッサを搭載したモバイル端末や、ArmにWindows 10を搭載した低消費電力のプラットフォームを対象としたDirectX 12ベンチマーク」ということで、こちらも主にモバイルPCを対象にしたテストです。総合スコアに加えて、GPUとCPU個別の性能も、それぞれスコアで示します。

こちらは、Steel Nomad Lightとは違い、「最適なパフォーマンス」の成績が明らかに「バランス」より伸びています。Core Ultra 5 225U搭載のX13 Gen 6は大きく上回るものの、他のCore Ultra 7 255H搭載機ほどではない…という傾向は、これまでのテストと同じと言えそうです。

3DMark | Solar Bay

レイトレーシング機能を確認する「Solar Bay」テストを余裕のスコアで完走することも確認できました。レイトレーシングと言えば、かつては一枚画を出力するために何時間も掛けて計算させたものですが、今やリアルタイムでインタラクティブにアニメーションを動かせるんですね。もちろん、専用のハードウェアに加えて、リアルタイムで扱うためにアルゴリズムは相当簡略化の工夫をしているはずですが、感慨深いものがあります。


最後は、ストレージの定番ベンチマーク、CrystalDiskMarkです。内蔵のSSDは、「SAMSUNG MZVLC1T0HFLU-00BLL」として認識されていて、PCIe Gen5x4でシステムに接続されています。X1 Carbon Gen 13では、初期の固定仕様の製品にPCIe Gen5x4接続のSSDが採用されていて、10 GB/s超えのとんでもない高速アクセスを見せつけました。より小型のX13 Gen 6ではどうでしょうか。

最適なパフォーマンスバランス
Read (MB/s)Write (MB/s)Read (MB/s)Read (MB/s)
SEQ1M Q8T113686.508048.9913333.746460.30
SEQ1M Q1T16008.523687.125399.333060.12
RND4K Q32T1539.46433.55432.80366.31
RND4K Q1T170.76154.1563.79124.08
CrystalDiskMark

どちらの電源モードでも、シーケンシャル(連続)読み込みは13 GB/sを超える超高速。「最適なパフォーマンス」ではシーケンシャル書き込みも約8 GB/sとなり、PCIe Gen4x4の理論上の最高データ転送速度(約7.88 GB/s)を上回っています。PCIe Gen5x4の意味がある性能である…とは言えそうです。

ただ、リテール向けに販売されているSamsung SSD 9100 PROのレビュー記事に出ている数字と比べると、かなり控えめになっています。銅製のヒートスプレッダーで排熱を促しているとはいえ、フルパワーで動き続けるのは難しいのでしょうね。もしかすると、最初のシーケンシャル読み込みだけはフルパワーで動けているものの、その後は発熱を抑えるために速度を下げている状態なのかも知れません。


総合すると、Core Ultra 7 255Hも、PCIe Gen5x4の「Performance」高速SSDも、カスタマイズで選択することで、確実に性能のアップにはつながっていると考えられます。ただ、悩ましいのは、それが使っていて誰にでも実感できるのか?となると、ちょっと難しそうなこと。Web閲覧やOfficeアプリなら、最低ラインに近い構成でも十分快適に使えてしまうのではないかと思います。あとは、せっかくHシリーズのプロセッサーを載せたのにフルパワーでは回せていない…というところも、ちょっと気になる人がいそうです。

この構成が生きてくるのは、例えばゲームや動画編集など、もう少しPCに負荷がかかるような使い方をする場合。あるいは、GPUを使ったローカルAIを動かせるかどうかで、決定的な差が出る可能性がありますが、これは対応するアプリがどのくらい登場してくるか次第…という面があります。結果的にオプション選択は無駄な追加出費になってしまっている可能性もあるわけで…それこそ吉と出るか、凶と出るか?です。

まあ、自分ではどうしようもないところも多いので、悩んでいても仕方ありません。とりあえずは、やりたいコトのために、トコトン使い倒すつもりで行きましょう。外に持ち出す度に、5G対応のワイヤレスWANを搭載した恩恵は受けられるわけですしね。



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