7月になりました。実は、普段からクルマによく乗っている、特にカーナビの地図画面を気にしながら走っている人たちにとっては、ちょっとした変化が起こっています。交通渋滞を示す赤や黄色の線が、最近急に増えたような気がしませんか?おそらく、それは気のせいではありません。

2020年4月から、VICSによる「プローブ情報を活用した道路交通情報サービス」の実証実験が行われています。これまでは関東地域と愛知県、大阪府、そして北海道の札幌周辺でのみ行われていたそうですが、今年の7月4日から、対象が全国47都道府県の道路に拡大されました。私の住む浜松市でも、もちろん実証実験が始まっているはずです。


この実証実験では、トヨタ・日産・ホンダ・パイオニア(カロッツェリア)の4社が車載のカーナビから集めている車両の走行情報(いわゆる「プローブ情報」)を集約し、VICSが道路上に設置しているセンサーから得ている渋滞情報と統合して提供しています。情報は、VICSがFM多重放送で送っている従来の交通情報と互換性があるので、VICS対応のカーナビを使ってさえいれば、すぐにでもこの実証実験の成果を見ることができます。従来の2倍以上の道路で、渋滞情報が提供されているのだそうです。

スマートフォンの地図アプリ…例えばGoogle マップも、同様にして個々のユーザーからの情報を吸い上げることで、道路の渋滞情報を得てユーザーに提供しています。しかし、実は結構危ういのが、スマートフォンがクルマとは紐付いていないこと。実際に、何十台ものスマホを手押し車でゆっくりと移動させ、Google マップ上に実際には無い渋滞を作り出す「実験」をしてみたツワモノもいるそうですね。その点、車載のカーナビから得られる情報は、クルマの動きを示していることが担保される、信頼性の高いものです。

これまでは、4社がそれぞれ自社のデータのみを分析して使っていました。私にはホンダのインターナビカロッツェリアのスマートループの利用経験がありますが、どちらも既にかなり強力な情報になっていたと思います。しかし、データが統合されれば、さらに的確に状況を捉えられるようになるだろう…というのは、容易に想像が付きます。

これまでは、トヨタ車の渋滞はインターナビでは見られなかったわけですし、その逆もまた然り。情報が集約されることで、渋滞と判断される地点は増えるのが必然です。もちろん渋滞が増えたわけではなく、新たな情報が加わったことで、より多くのことがわかるようになっただけです。

ルート検索もこの渋滞情報を加味して行われることになりますから、到着予想時刻の精度も向上することが期待されます。もともとインターナビはかなり正確に到着時刻を予想できていますから、今回のVICS実証実験で効果が実感できるかは疑問ですが、プローブ情報を活用しない古いカーナビなら、劇的な効果が得られそうです。


近年、この実証実験のように、同様の商品やサービスで競合する企業同士が手を組む事例をよく見かけるようになりました。「競争領域と協調領域」なんて表現もされますが、各社が独自の技術を磨いて競争するのは当然として、互いに手の内を明らかにしながら一緒にやった方が良い結果が出せそうな分野が、ここで言う「協調領域」になります。

カーナビのプローブ情報のようなビッグデータは、データがどれだけ大量に集められるかが肝ですから、まさに協調領域そのものです。しかも、得られたデータをどう使うか?という部分で、各社の独自性も発揮できるはずですから、競争領域も依然として残っているわけです。普段はライバル同士だとしても、組まない手はありませんよね。

協調領域が増えてきているように感じるのは、巷の様々な課題が大規模化、複雑化して、もはや単独の企業レベルでは対応しきれなくなっている…という部分もあるようです。クルマ関連だと、電動化技術や自動運転などはまさにそうですね。研究開発に莫大な予算が必要なこともありますが、様々な企業のクルマが同じ道路を走るわけですから、どうしても共通の部分を持たざるを得ない…という面もあります。

今回のVICSの実証実験は、効果が上がるのは明らかだと思いますし、実証実験で終わらせずに、是非正式運用につなげていただきたいと思います。もっとも、正式サービスにするとなると、お金をどう負担するかの問題がシビアになりそうで、実現するのか不安もありますが。

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