新型コロナウイルスが、相変わらず猛威を振るっています。ひと月前と比べると、残念ながら状況は収束に向かっているとはとてもいえません。なかなか自宅に籠城するわけにもいきませんが、手洗いの励行など、まずは自分が感染しないように、他の方々に広げる感染源にならないように注意しています。
世界的な流行を終息に向かわせるための重要なポイントとして、治療薬やワクチンがどのくらい早期に用意できるのか?ということがあります。もちろん、これは医学に携わる皆さんが一生懸命取り組んでいることであるわけですが、実は私たち庶民でも、これら新薬の開発につながる研究に、ちょこっとだけでも貢献できる可能性があります。
アメリカのスタンフォード大学が中心となって進めている、Folding@home(フォールディングアットホーム)というプロジェクトがあります。これは、その名のとおりタンパク質の折りたたみ(Folding)構造を解析するために始まったものですが、ガン、エボラ出血熱やデング熱などの伝染病、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経系の疾病などでのタンパク質の働きを明らかにし、新薬を開発するための取組が中心となっています。
このプロジェクトに参加するために、生命化学の専門知識は必要ありません。インターネットにつながったコンピューターに、専用のアプリをインストールするだけ。バックグラウンドで、Folding@homeのための計算が行われます。1台1台の端末が処理する計算量は少しずつでも、これが数千台、数万台…と集まると、スーパーコンピューターにも匹敵するような処理を行うことができます。いわゆる「分散コンピューティング」プロジェクトです。
このFolding@homeが、新型コロナウイルス(COVID-19)の解析を始めています。この取組が始まってから、参加する機器数が大幅に増え、計算能力は実に1EFLOPS(1えくさふろっぷす;浮動小数点演算を1秒間に100京回行える性能)を超えているのだそうです。これは世界最速のスーパーコンピューターの10倍に相当するのだとか。ネットワークの力、恐るべし…です。
我が家には何台もパソコンがありますが、その中でも私のデスクトップPC・HP Pavilion Wave 600は比較的計算能力に余裕があると言って良いでしょう。特に、内蔵されているディスクリートGPUのRadeon R9 m470は、実際にはほとんど出番がない状況。モバイル向けのGPUなので、たいしたパワーはありませんが、それでも本来GPUは並列計算が得意で、こういう仕事には向いています。遊ばせておくくらいなら、ちょっと仕事をさせてみましょう。
Folding@homeのWebサイトから、クライアントアプリをダウンロードしてインストールします。Windows(32bit版・64bit版共通)の他、MacOS用、Linux用のアプリもここから入手可能です。かつてはゲーム機・PlayStation3用のアプリも提供されていて、大いに計算に貢献したのだとか。
Web画面上と専用のコントロール用アプリの双方から、設定を変更することができる他、タスクトレイに常駐するアイコンを右クリックすると、基本的な設定を切り替えることができます。
「I support research fighting(~と闘う研究を支援します)」から、解析に協力する疾病を選択します。「Any disease(すべての病気)」を選ぶと、COVID-19の解析も行われるようになります。右下に、現在処理している解析についての説明が表示されていますが、ここに記載されている「SARS2-nCoV-2」というのも、今回の新型コロナウイルスのことです。
Folding@homeの計算に割く計算能力のレベルは、3段階で設定します。medium以上のレベルになると、CPUの他にGPUも使って計算を行うようになります。GPUについては、nVIDIA GeForce専用のライブラリであるCUDAと、AMD Radeonなど他社のGPUでも実行可能なOpenCLの両方で動作可能になっています。GPUを働かせつつ、普段どおりにパソコンとしての利用もしたいので、計算レベルはmediumに設定しました。
Windows 10のタスクマネージャーで見ると、GPU 1(Radeon)は「Compute 1」だけがほぼ100%になっているものの、全体としての利用率はほぼゼロ、という表示になっています。CPUの使用率もほとんど上がりません。
本当に動いているのか?と疑問になりますが、AMDのRadeon用設定アプリを開いてみると、ちゃんとGPUは100%近いレベルで働いているようです。普段はCPU内蔵のGPUで画面が表示されているので、Radeonはほとんど眠りっぱなしなのですが、ようやく水を得た魚になった…というところでしょうか。
計算の実行中は、冷却ファンの回転音がいつもよりもちょっと高いような気がします。とはいえ、他に音楽など掛けていれば全く気にならないレベル。あとは消費電力がちょっと気になりますが、これはしばらく動かしてみないと何ともいえないところです。とはいえ、先ほどのAMDのユーティリティによると、GPUの消費電力は35Wほどだそうなので、家計にそれ程深刻な打撃を与えるモノにはならなさそうです。
もともと全然使っていなかったGPUが仕事をするようになっただけなので、普段の操作の方には全く影響がありません。これでまた三次元CGにハマり直したりすると、また事情が変わってくるかも知れませんが、とりあえずこの「ちょこっと社会貢献」を続けてみようかと思います。
…という感じで始めて数日が経ちますが、どうやら当初はCPUの方が計算を割り当てられていなかったようです。CPUにも計算が割り当てられるようになり、ちょっと様相が変わってきています。
タスクマネージャーでのCPUの利用率が100%近いレベルになってきました。とはいえ、Folding@homeが使っているのは8コア中の6コア分だけ…ということもあり、フォアグラウンドでの操作はちゃんとできています。
ファンの回転音はさらに上昇。全力で回っている場面も出始めています。さすがにちょっと荷が重すぎたかな?とも思っているところですが、CPUも解析に本格参戦させるかは、しばらく動かしてみてから決めましょう。やろうと思えば、コントロールアプリ側からCPUの参加だけ止められますし、アイドル状態を検知して計算させる…なんてことも可能ですし。
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